一月ほど前 新宿の街外れで 偶然ともだちに会う。オーッと手を合わせ、お互いのヒマを確かめ、じゃその辺りで一杯となり、思い出横丁で互いの最近のことなどを小一時間話した。
ともだちは舞踏家工藤丈輝。
出会ったのは、お互い20代前半の頃で、工藤君はまだ慶応の学生だったと思う。和栗由紀夫師匠の弟子として数年間一緒に踊った。地方公演に行ったり、舞台裏のバイトを一緒にやったりしていた。
とは言え、僕のボンヤリとした感じとはまるで違い、工藤君はその頃から踊りに人生を賭ける強い意志を持っていた。
和栗さんとこをやめた後も、山海塾に入ったり、自分のグループを立ち上げたり、世界中の彼方此方で精力的に頑張っていると噂を聞いた。
逆に、工藤はもうダメだろう、みたいないい加減な噂を聞いた事もあった。
若い頃も過ぎ、多くのダンス仲間が踊りを諦め、やめてた頃っだった。
そりゃあ、大変だ。踊りを人生の中心に据えるなんて並大抵の事じゃない。そんな噂がたったとてしょうがない。でも、久しぶりの再会で、いい加減な噂は出鱈目だと、すぐにわかった。
工藤くんの求道的な態度は昔と変わらないけど、一皮むけた大らかさ、楽天的な強さをこの日感じた。
それから数日後には、再会の喜びを手紙に綴って送ってくれた。
良い男だ。全く。
そして、少し前にコンクリート打設によんだ。
働きぶりを見ているだけで、ここ数十年の真摯な生き方がわかる。状況を的確に判断しタンタンと働いてくれた。
ボソッと僕が言う。
「舞踏でさ、学んだことを、この建築に込めてるつもりなんだ…」
工藤くんは「良くわかります」と。
更に「 僕は職業柄こういうアバンギャルドなモノ見慣れてるけど、コレが日常の街中にあることは凄いな…」と。
僕は、舞踏の子である。
舞踏に学んで、グニャグニャだった人間の心棒を立て直し、今、こうやってやれてるのである。蟻鱒鳶ルには、舞踏で学んだアレヤコレや沢山の事を現そうと企んでいるんだ。
工藤くんに通じたことがうれしかった。
ずいぶん呑んで別れた。
数日後のニュース
工藤丈輝 主演作『満月』がロシア国家の舞台芸術賞、ゴールデンマスク、先駆的舞台部門の作品賞を受賞!
詳細:http://roshianow.jp/articles/2012/10/22/39551.html
http://eng.goldenmask.ru/gm.php?id=112
おめでとう!!!
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